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教育の未来を考える一冊。Khan Academy 創始者が語るこれからの教育のあるべき姿とは。

"The One World Schoolhouse"を読み終えた。
オンラインビデオ学習サービス「Khan Academy」の創始者 Salman Khan の熱がこもった一冊だ。

筆者は、アメリカの教育問題にとどまらず、世界全体の教育について語っている。オンラインビデオという媒体はそれを可能にするわけだ。それはまた、日本にいる僕らも、世界の教育について語る権利があるということだろう。

インターネットの誕生で世界はつながった。とある一人の証券マンが思いつきから始まった一つのサービスが、世界をも変えてしまうことがある。そんな可能性を感じた。

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印象に残ったフレーズを紹介

特に印象に残ったフレーズを紹介していこう。

Mastery learning simply suggests that students should adequately comprehend a given concept before being expected to understand a more advanced one.


The One World Schoolhouse: Education Reimagined (p. 37)

(大意)
Mastery Learning(熟達学習)とは、生徒が応用度の高い問題を解けるものであるとされる前に、今までに習ったコンセプトを十分に理解しておくべきである、というごく単純なことだ。

簡単そうに聞こえるが、これが既存の学校システムでは難しい。なぜか?

In a traditional academic model, the time allotted to learn something is fixed while the comprehension of the concept is variable. Washburne was advocating the opposite. What should be fixed is a high level of comprehension and what should be variable is the amount of time students have to understand a concept.


The One World Schoolhouse: Education Reimagined (p. 39).

(大意)
伝統的な学校体系では、何かを学ぶために割り当てられた時間は固定されている。その一方で、そのコンセプトの理解度はばらばらである。ワッシュバーン氏は、その反対を主張した。すなわち、固定されるべきは高い理解度であり、ばらばらであるべきは生徒がそのコンセプトを理解するのにかかる時間である。

先ほどの疑問がとけた。従来の学校システムでは、時間が固定されるだけで、高い理解度は固定(保証)されないから、熟達学習もかなわないのである。教育のあるべき姿は、その逆。

その教育の姿を実現させるものが、Khan Academy そのものであるわけだ。

In gradually developing my own approach to teaching, one of my central objectives was to reverse this balkanizing tendency. In my view, no subject is ever finished. No concept is sealed off from other concepts. Knowledge is continuous; ideas flow.


The One World Schoolhouse: Education Reimagined (p. 51).

(大意)
教えるということに取り組んでいく中で、私の中の中心的な目的の一つは、この(学習分野が)分断されてしまっている傾向を逆転することだった。私が思うに、どの科目も決して終わりはしない。どのコンセプトも他のコンセプトから切り離されていたりはしない。知識というものはつながっているのだ。アイデアが流れるかのように。

これも Khan Academy で実践されていることの一つだ。科目毎、単元毎でわざわざ切り離す必要はない。それらはつながっている。物事は、一つひとつ覚えるよりも、何か既知のアイデアと関連付けて覚えたほうが記憶効率が良いということは研究で分かっている。切り離す理由が見当たらない。

さいごに

3箇所引用してみたけれど、この本はかなり内容が濃い。なので、興味を持った人はぜひ読んでみるといいだろう。Khanさんの教育にたいする斬新な考え方、Khan Academy の発足から事業拡大へと至る感動的なストーリー、いずれも一読に値する。

英語のレベルはそこまで高くないように感じた。何冊か洋書を読んだことのある人ならば、読みこなせるだろう。

 The One World Schoolhouse: Education Reimagined

おまけに、Khan Academy のビデオをひとつ貼り付けておく。参考までに。


Algebra: Linear Equations 1

それにしても、邦訳版の出版が待ち遠しい…。

© 2018 Motoki Yoshida