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1500人の新規事業経験者アンケートから分かった新規事業の真実 / 「『事業を創る人』の大研究」

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「事業を創る人」の大研究

「事業を創る人」の大研究

ざっくり内容

本書は、一言でいうと、企業内の新規事業についてアンケートを元に科学した本だ。

新規事業について、その戦略論については数多の本が出ているが、その現場について統計データで分析を試みた本は珍しいだろう。そもそも、そのような統計データを集めるところから行わなければならない。そこがハードルだ。

本書では、民間企業における新規事業の経験者1500人に対してアンケート調査を行ったという。このデータだけでも相当な価値があるといえよう。

データからの考察部分について、データから分かることを詳述している形なので、基本的にはデータを追っていき気になるところは文章を読むという読み方でもよいかもしれない。

以下では、特に気になった点について触れていこう。

気になった点抜粋とコメント

業績志向は新規事業の業績に影響しないのに対し、成長志向は新規事業の業績を高める影響がある

これは面白い結果。業績志向は既存事業の業績には大きく寄与するが、新規事業となると成長志向のある人のほうが業績を高めることにつながるのだという。既存事業と新規事業とでは、ゲームが異なるということなのだろう。

新規事業は、はじめて任される1度目よりも2度目以降のほうが成功確率が上がる

サイバーエージェントのミッションステートメントには「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを。」という言葉があるが、その経済的合理性が証明されたことになる。

新規事業の業績に影響しているのは「経営層からの内省支援」と「社外の新規事業担当者からの業務支援」

新規事業責任者は得てして孤独になりやすい。そこで、新規事業経験のある経営層により内省支援や、社外で同じような立場にある人との関わりにより、メンタル的に救われるというのが大きいのかもしれない。

経営層が新規事業に対して多産多死型スタンスを持っているほど、新規事業の業績は低くなる

これはまた面白い結果。新規事業はたしかに成功する確率は少ない。しかし、多産多死を経営層が名言してしまうと、現場の士気が下がるのだろう。

そうではなく、一緒になんとかして立ち上げようという姿勢がよい、とのこと。

成果を上げた企業と成果が出なかった企業との間で最も大きな差が出ているのは「自社の強みの分析・他社研究」

企業の新規事業においては、いかに自社のアセットを用いて他社との差別化を図るかが重要なファクターとなってくる。そうなったときに、自社の分析と他社研究は必要不可欠なのだろう。

他部門からの期待が高く、新規事業を応援しようという組織風土は新規事業の業績を高めることがわかりました。一方、お金の無駄遣いだと思われ、経営からの関心も薄い組織ほど、新規事業の業績は低い傾向にある

これは「組織風土」の観点で面白い結果だった。新規事業を応援しようという組織風土は業績を高める。「育成事業」といった魅せ方にするのもよいだろうとのこと。これは納得。

まとめ

企業内の新規事業について、統計を元に科学したという面白い内容だった。今まで概念としては良いと言われていたことも、こうして数字とセットで語られるとより説得力がある。

個人としては、新規事業を任されている立場なので、当事者として活かしていきたいと思う。

企業内の経営に携わる人、新規事業に携わる人及び興味がある人にはおすすめの一冊。

「事業を創る人」の大研究

「事業を創る人」の大研究

ちなみに、こちらの本は『ペア読書』という手法で読みました。 おすすめな読書法なので、気になる方は下記記事で詳細を見てみてください。

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